今回は東京医科大学の小論文試験の対策として、入試過去問の解説と、解き方のポイントを紹介いたします。
また、問題の特徴についても紹介しておりますので、看護学部の入試で小論文がある方は必見の内容となっております。
目次
東京医科大学看護学科 推薦入試 小論文対策
問題の概要
<出題形式>
図表読み取り
<出題内容>
◎図表読み取り
・図1「未婚割合の推移(男女・年齢別)」の読み取り(30字×3問)
・図2「25〜34歳の未婚者が独身でいる理由(男女別)」について、問1で解答した結果のうち一つ以上と関連付けた論述(500字以内)
問題の特徴
東京医科大は過去3年間、図表読み取り形式の問題を出しております。
過去3年間の問題から見る傾向として「日本の社会状況に関しての論述」が問題の特徴になっております。
そのため、対策に関しての図表を読み取る力だけでなく、社会状況を知るための情報収集力も必要とされます。
解き方のポイント(取り組むにあたって)
2025年度入試の問題では2つの図表を使って問題を解いていきます。
また、図1・2を紐づけて論述を行なう問題も出ていきます。
解き方のポイントとしては以下のようになります。
・複数のデータ間の関連付け
・図表の見方を知っておく
上記の力を見つけて解くことがポイントです。
図表読み取り型問題について
図表読み取り型の特徴
今回紹介する藤田医科大学の小論文問題の形式である【図表読み取り型問題】は以下の特徴があります。
統計データの正確な読み取り力
グラフから未婚率の推移や独身でいる理由などの情報を、男女別、年齢層別、年代別に正確に読み取る力です。問1で3つの主要な結果を挙げ、それぞれ30字以上で記述するため、単に数値を読み取るだけでなく、その傾向や変化を的確に把握することが求められます。
複数のデータ間の関連付けと論理的思考力
問2では、問1で分析した未婚率の推移(結果)と、図2の独身でいる理由(要因)を結びつけて考察する力が求められます。例えば、「なぜ未婚率が増加したのか?」という問いに対し、「『適当な相手に巡り会えない』と感じる人が増えたため」といった因果関係を、データに基づいて論理的に説明する必要があります。
500字程度の文章で自分の考えをまとめる表現力
グラフから読み取った事実と、それらを関連付けて導き出した考察を、500字程度の限られた文字数で、説得力のある文章としてまとめる力です。社会の現状に対する深い理解を背景に、自身の意見を明確かつ簡潔に表現することが重要です。
第1問 解き方のポイント
図表読み取り型問題は課題文型のようにヒントとなる情報を見つけにくい問題形式になります。
ここでは、図表読み取り型の解き方のポイントを紹介していきます。
全体的な傾向の把握
まず、グラフ全体を俯瞰し、男女ともに未婚割合がすべての年齢層で増加傾向にあることを把握します。特に、1990年から2020年までの30年間で、未婚割合がどのように変化したかを読み取ることが重要です 。
- 未婚割合の全体的な増加傾向
1990年から2000年にかけて、男性・女性ともに全ての年齢層で未婚割合が増加。これは、日本の晩婚化や未婚かの進行を示す最も重要な点です。 - 男女間の未婚割合の差
グラフを見ると、すべての年代において男性の未婚割合が女性よりも高いことがわかります 。例えば、2020年の35-39歳では男性が34.5%であるのに対し、女性は23.6%となっています。 - 50歳時の未婚割合の急増
特に注目すべきは、生涯未婚率を示す50歳時の未婚割合が、男女ともに大幅に増加している点です 。男性は1990年の5.6%から2020年には28.3%へと急増し、女性も1990年の4.3%から2020年には17.8%へと増加していますこの増加は、若年層の未婚割合の増加よりも顕著であり、社会構造の変化を強く示唆しています。
男女間の比較
- 未婚率の割合の高さ
全ての年齢層において、男性の未婚割合は女性よりも高い傾向がある。 - 増加率
男性は特に30代から40代、女性は20代から30代にかけての未婚割合の増加が顕著となっている。
年齢層別の詳細な分析
各年齢層の未婚割合の推移から、特に特徴的な点をピックアップ。
- 50歳時の未婚割合の急増
男女ともに、50歳時の未婚割合が1990年と比べて2020年には4倍以上に急増している点は、生涯未婚率の増加を示す重要な結果です 。
・男性: 5.6% (1990年) → 28.3% (2020年) 。
・女性: 4.3% (1990年) → 17.8% (2020年) 。 - 若年層(25-29歳)の未婚割合
女ともに80%に迫る勢いで増加しており、晩婚化の進行を裏付けています。
これらの分析を基に、3つの結果を30文字以上で具体的に記述すると良いでしょう。例えば、「男性の50歳時の未婚割合は1990年の5.6%から2020年には28.3%へと4倍以上増加し、生涯未婚率が大幅に上昇している」のようにまとめます 。
第2問 解き方のポイント
問1の結果との関連付け
まず、問1で挙げた3つの結果のうち、最も関連性の高いものを1つ以上選びます。例えば、「50歳時の未婚割合が男女ともに急増している」という結果を選んだとします。次に、この結果を問2のグラフ(図2)に示された独身でいる理由と結びつけます。
- 具体例: 50歳時の未婚割合が急増している背景には、若い世代(25-34歳)が結婚を選択しない要因があると考えられます。図2では、「適当な相手に巡り会わない」や「自由や気楽さを失いたくない」といった理由が男女ともに高い割合を占めており、これらの価値観の変化が、結果として生涯未婚率の上昇につながっていると考察できます。
図2の男女別の詳細な分析
- 男性の傾向
・最も多い理由: 「適当な相手にめぐり会わない」が2021年調査で43.3%と最も高い割合を占めています 。
・次いで多い理由: 「自由や気楽さを失いたくない」が26.6% 、「仕事・学業に打ち込みたい」が14.3% と続いています。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
・これらの結果から、男性は結婚相手との出会いの機会の不足や、自由な生活を重視する傾向が強いことがわかります。 - 女性の傾向
・最も多い理由: 女性も同様に「適当な相手にめぐり会わない」が48.1%と最も高く、男性よりも割合が高いです 。
・次いで多い理由: 「自由や気楽さを失いたくない」が31.0% 、「仕事・学業に打ち込みたい」が14.4% と、男性と似た傾向が見られます。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
・これらのことから、女性も出会いの機会の不足に加え、キャリアや自由な生き方を追求する人が多いことがうかがえます。
論理的な考察と見解の提示
最後に、以上の分析に基づき、500字程度の文章で自分の考えをまとめる。
論理の展開
まず、問1で選んだ結果(例:未婚割合の増加)を提示し、その背景には図2で示された独身理由(例:「適当な相手に巡り会わない」「自由や気楽さを失いたくない」)があると述べます。
社会文化的背景
なぜこのような価値観の変化が起こったのか、その社会的な背景について考察します。晩婚化・非婚化の進行、女性の社会進出、個人の価値観の多様化などが挙げられます。
自分の見解
これらのデータと考察を踏まえ、今後の社会がどのように変化していくか、あるいはどのような社会のあり方が望ましいかについて、自分の意見を述べます。例えば、結婚を強制する社会ではなく、多様な生き方やライフスタイルが尊重される社会の重要性などを論じると良いでしょう。
この問題では、グラフから読み取れる事実から傾向を分析していき、自身の見解を述べていきます。また2つのグラフの情報を素早く正確に読み取ることが問題を解くポイントになります。
図表読み取り型の対策について
図表読み取り型問題の対策
図表の「正確な」読解力を鍛える
多様な図表形式になれる
棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、帯グラフ、散布図、レーダーチャート、複合グラフ、表など、様々な形式の図表の読み方を習得します。それぞれの形式がどのような情報の提示に適しているかを理解することが図表読み取り問題では最も重要です。
「5W1H」で情報を整理する習慣
・When (いつ): 期間、年次、時点など。
・Where (どこで): 対象地域、国など。
・Who/What (誰が/何が): 対象となるデータ項目(例:出生数、合計特殊出生率、肥満者の割合、基礎代謝、筋肉変化率)。
・How much/many (どのくらい): 数値、割合、単位(例:万人、%、kcal/日)。
・How (どのように): データの推移(増加、減少、横ばい、変動)や分布。
凡例と軸を確認する
グラフの棒や線が何を示しているのか(凡例)、縦軸と横軸がそれぞれ何を表し、単位は何なのか(軸)を最初に確認する習慣をつけます。これを怠ると、全く異なる解釈をしてしまう可能性があります。
数値の「絶対値」と「変化率」の両方に注目する
・絶対値: 特定の時点での具体的な数値(例:2022年の出生数は77万人)。
・変化率: ある期間における増減の割合や、前年比、基準値からの変化(例:〇〇%減少、〇〇倍増加)。
複数の図表間の関連性を見つける練習
複数の図表が提示される場合、それぞれが独立した情報ではなく、何らかの関連性を持っていることがほとんどです。例えば、肥満者の割合と基礎代謝、筋肉変化率のグラフが提示された場合、これらがどのように互いに関連しているのかを考えながら読み解きます。
限られた字数内での「効果的な」表現力を磨く
要約力を鍛える
図表から得られる情報は膨大になりがちです。その中から設問の意図に沿った最も重要な情報を抽出し、簡潔にまとめる練習をします。冗長な表現や重複を避けます。
キーワードの活用
図表のテーマに関連する専門用語やキーワード(例:少子化、高齢化、合計特殊出生率、基礎代謝、生活習慣病など)を適切に使用することで、内容に深みと説得力が増します。
これらの対策を継続的に行い、図表読み取り型の小論文問題への対応力を伸ばしていきましょう。

