今回は川崎市立看護大学看護学部の小論文試験の対策として、入試過去問の解説と、解き方のポイントを紹介いたします。
また、問題の特徴についても紹介しておりますので、看護学部の入試で小論文がある方は必見の内容となっております。
目次
川崎市立看護大学 看護学部
推薦入試 小論文対策
問題の概要
<出題形式>
図表読み取り
<出題内容>
◎図表読み取り(1問)
・ヤングケアラーに関する調査結果への論述(800字以内)
問題の特徴
川崎市立看護大学の小論文の問題文の特徴は1問の中で「課題文読解」と「図表読み取り」が一緒になっている点です。
課題文といっても図表読み取りの前置きに近いものになるため、メインで見ていくのは図表の方になります。
解き方のポイント(取り組むにあたって)
川崎市立看護学部では、先述のように例年、図表の読み取りから論述を展開していく形式で推薦入試の小論文が実施されます。
小論文を書くにあたって、以下のような力が求められます。
・資料の読解力と分析力
・論理的思考力と考察力
・表現力と構成力
また、同大学は医療系・社会福祉系の話題が例年取り扱われる傾向にあります。そのため、医療系のニュースや医療・福祉に関わる社会問題の知識はしっかりとつけておきましょう。
図表読み取り問題について
図表読み取り問題に取り組むうえで
今回紹介する川崎市立看護大学の小論文問題の形式である【図表読み取り型】は以下のことを意識して取り組みましょう。
事実と傾向の正確な抽出
図表内の最大値・最小値や、各区分の比較における顕著な差など、論拠となる具体的な数値(事実)と傾向を正確に把握しましょう。
因果関係の論理的な推論
抽出した事実(データ)を基に、「なぜこの数値なのか」「この数値が示唆する問題点や影響は何か」を論理的に推測し、設問の論点と結びつける。
多角的な視点での構成
読み取った情報から、テーマの複数の側面(例:精神面、学業面、社会面)における影響を考察し、序論・本論・結論の明確な構成で展開する 。
具体的な数値の引用と説明
考察の説得力を高めるため、抽象的な表現に終始せず、「〇〇が××人であるため」といった形で、資料の具体的な数値を論拠として文章中に組み込んでいきましょう。
解き方のポイント
今回紹介している川崎市立看護大学の図表読み取り型小論文は、表の中の情報を論拠にしながら自身の考えを展開していきます。
ここでは2025年度の推薦入試の問題の解説も踏まえながら図表読み取り型の解き方のポイントを紹介していきます。
川崎市立看護大学 学校推薦型選抜 小論文解説
問題の概要と対策ポイント
この小論文は、フロイトの「錯誤行為」(無意識の願望の表れとしてのミス)の概念を理解した上で、自身の経験に適用し、その失敗を防ぐための具体的かつ論理的な対策を論じる力を問うています。
出題テーマと形式
テーマ: ヤングケアラーについて。
形式: 文章と統計データ(表)を読み込み、それらを基にヤングケアラーに「どのような影響が生じやすいか」を800字以内で論述する「資料読解・分析型」の小論文。
求められる力: 資料から事実を正確に読み取り、論理的に分析・考察し、多角的な視点から自分の考えを説得力のある文章で構成する力。
資料が示す主な事実
- ヤングケアラーの定義と出現率 定義: 本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どものこと。 出現率: 中学2年生で5.7%(約17.5人に1人)、全日制高校2年生で4.1%(約24.4人に1人)と、各クラスに約2人いる計算になる。
- ケアの頻度(表1) 中学2年生、全日制高校2年生ともに、回答者の約半数近くが「ほぼ毎日」ケアをしている(中2: 45.1%、高2: 47.6%)。 特に通信制高校生は「ほぼ毎日」ケアをしている割合が65.3%と最も高い。
- 1日当たりのケアに従事する時間(平日)(表2) 中学2年生、全日制高校2年生ともに、3時間以上ケアに従事している生徒が3割以上いる(中2: 33.5%、高2: 35.1%)。 7時間以上の長時間ケアに従事している生徒も、中2で11.6%、高2で10.7%いる。 通信制高校生は「3〜7時間未満」(34.7%)、「7時間以上」(24.5%)の割合が高く、長時間ケアの負担が特に重いことが示唆される。
解き方のポイントと構成案
資料の事実から論点を導出する
資料が示す「高頻度」と「長時間」という事実から、それが生徒の生活に与える時間的制約を起点とし、そこから生じる多方面の影響を論理的に推論します。
データ論理的な推測(影響) 高頻度・長時間ケア、学業時間、睡眠時間、自由時間の絶対的不足。 時間不足、疲労の蓄積(身体的影響)、学習の遅れ(学業的影響)、友人との交流不足(社会性への影響)。 精神的負担、孤立感、将来への不安、抑うつ傾向(精神的影響)。
構成案(800字以内の目安)
序論(約100字)
ヤングケアラーの定義と出現率(クラスに2人程度)に触れ、問題の普遍性を指摘する。本論で、資料に基づき「時間的制約」から生じる多岐にわたる影響を考察することを宣言する。
本論(約600字)
【時間的・身体的影響】: ケアの「頻度」(ほぼ毎日)と「時間」(3時間以上、7時間以上)のデータに言及し、学業や睡眠時間が奪われる実態を論じる。これが心身の疲労や体調不良につながることを指摘する。
【学業的・進路への影響】: ケアによる時間的制約が学習の遅れや成績不振を招きやすいこと、また通信制・定時制高校生のデータから、ケアの負担が進路の選択肢を狭める可能性を考察する。
【精神的・社会的な影響】: 責任感や罪悪感による精神的ストレス、また友人との交流不足や学校への欠席・遅刻による社会的孤立が生じやすい点を深く考察する。
結論(約100字)
ヤングケアラーの問題は個人の家庭問題ではなく、社会全体で認識し支援すべき課題であることを再確認する。看護学を学ぶ者として、将来的な早期発見や適切な支援に貢献する決意などを述べて締めくくる。
対策の方法
知識面の対策(「ヤングケアラー」を深く理解する)
基本知識の整理ヤングケアラーの定義、日本の実態調査結果、国(こども家庭庁など)や自治体の支援策について知っておく。
関連分野の学習
少子高齢化、核家族化、精神疾患や障害を持つ人々の現状など、ヤングケアラー問題の背景にある社会構造的な課題を理解する。
看護との結びつけ
看護師が学校や地域、医療機関でヤングケアラーをどのように早期発見し、多職種と連携して支援できるかを具体的にイメージしておく。
技術面の対策(資料分析と論理構成の訓練) 図表分析の反復練習
新聞やニュースで取り上げられる統計データ(例:少子化、介護、いじめなど)を見て、「最大値」「差」「傾向」を瞬時に読み取り、そこから導かれる問題点をメモする訓練を行う。
800字構成の習熟
序論・本論・結論の字数配分(例:100字-600字-100字)を意識し、時間内に論理的な文章を書き上げる練習を繰り返す。
説得力のある文章表現
意見(主張)と、それを裏付けるデータ(論拠)を明確に記述する癖をつける。今回の問題であれば、「ケア時間が7時間以上の生徒が1割以上いることから、睡眠不足や慢性的な疲労が生じやすい」のように、「データ 影響」の流れを明確にする。
図表読み取り型問題の対策
ここからは川崎市立看護大学のみではなく、他校の対策にもつながる「図表読み取り型」小論文の対策方法を紹介いたします。
今後の対策に向けて、以下の3ステップを意識しながら取り組んでいきましょう!
Step1:図表の「正確な」読解力を鍛える
多様な図表形式になれる
棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフ、帯グラフ、散布図、レーダーチャート、複合グラフ、表など、様々な形式の図表の読み方を習得します。それぞれの形式がどのような情報の提示に適しているかを理解することが図表読み取り問題では最も重要です。
「5W1H」で情報を整理する習慣
・When (いつ): 期間、年次、時点など。
・Where (どこで): 対象地域、国など。
・Who/What (誰が/何が): 対象となるデータ項目(例:回答数、学校区分etc)。
・How much/many (どのくらい): 数値、割合、単位(例:人数、頻度、時間)。
・How (どのように): データの推移(増加、減少、横ばい、変動)や分布。
凡例と軸を確認する
グラフの棒や線が何を示しているのか(凡例)、縦軸と横軸がそれぞれ何を表し、単位は何なのか(軸)を最初に確認する習慣をつけます。これを怠ると、全く異なる解釈をしてしまう可能性があります。
数値の「絶対値」と「変化率」の両方に注目する
・絶対値: 特定の区分での具体的な数値。
・変化率: ある期間や区分ごとの増減の割合や、、基準値からの変化(例:〇〇%減少、〇〇倍増加etc)。
複数の図表間の関連性を見つける練習
複数の図表が提示される場合、それぞれが独立した情報ではなく、何らかの関連性を持っていることがほとんどです。例えば、肥満者の割合と基礎代謝、筋肉変化率のグラフが提示された場合、これらがどのように互いに関連しているのかを考えながら読み解きます。
Step2:限られた字数内での「効果的な」表現力を磨く
要約力を鍛える
図表から得られる情報は膨大になりがちです。その中から設問の意図に沿った最も重要な情報を抽出し、簡潔にまとめる練習をします。冗長な表現や重複を避けます。
キーワードの活用
図表のテーマに関連する専門用語やキーワード(例:ヤングケアラー、ケア、子ども家庭相談、家庭、介護etc)を適切に使用することで、内容に深みと説得力が増します。
これらの対策を継続的に行い、図表読み取り型の小論文問題への対応力を伸ばしていきましょう。
Step3:過去問演習を行う
ステップ1~3で培った力を本番で発揮するために、過去問を使った実戦演習は欠かせません。
- 制限時間内に解く訓練をする: 過去問を解く際は、必ず試験本番と同じ時間を計って取り組みましょう。時間内に英文を読み切り、小論文を完成させるための時間配分を体に覚え込ませることが重要です。
- 傾向を徹底的に分析する: 過去数年分の過去問を分析し、**「出題されるテーマ」「英文の難易度」「設問のタイプ」「適切な文字数」**といった志望校独自の傾向を把握しましょう。
- 添削で弱点を克服する: 自分で採点するだけでなく、書いた小論文は必ず学校や予備校の先生に添削してもらいましょう。「英文の読み取りミス」や「論理展開の不備」など、自分では気づきにくい弱点を客観的に指摘してもらうことが、得点力アップに直結します。
さいごに
ここまで、記事をご覧いただきありがとうございました。
今回は川崎市立看護大学の過去問解説を交えて、小論文対策の方法も紹介いたしました。
ただ、試験問題については年度ごとに変わっていくこともあるため、何がきてもいいように一通りいろんなパターンの小論文には触れておきましょう。
現在、弊校では小論文のパターン別の対策記事を出しております!
その他のパターンの対策を知りたいという方はぜひ、こちらもご覧ください!

