神奈川県立保健福祉大学看護学科 推薦入試 小論文対策

神奈川県立保健福祉大学看護学科 推薦入試 小論文対策

今回は神奈川県立保健福祉大学看護学科の小論文試験の対策として、入試過去問の解説と、解き方のポイントを紹介いたします。
また、問題の特徴についても紹介しておりますので、看護学部の入試で小論文がある方は必見の内容となっております。

神奈川県立保健福祉大学 看護学科
推薦入試 小論文対策

問題の概要

<出題形式>
課題文型

<出題内容>
◎課題文読解(英文)
・語句選択+下線部説明+内容一致の選択問題(3問)
・課題文を通じた論述問題(1問)

問題の特徴

神奈川県立保健福祉大学看護学科の小論文と特徴としては、英文読解をもとにした論述が中心です。
また、論述だけでなく語彙力や内容理解を伴う問題があるのが大きな特徴です。論述をする力だけでなく、英文を素早く正確に理解できるかが合格へのキーポイントになります。

解き方のポイント(取り組むにあたって)

2025年度入試の問題では、英文読解や日本語の論述問題を通じて、学生の複合的な能力を見ていきます。
以下のような力が入試の問題を解くうえで身につけておきたい力です。

・高い専門性と時事性
英文の速読・精読力
・複合的思考力

同大学は例年、地球規模の課題や医療倫理・公衆衛生にまつわる問題が出題される傾向にあります。
問題の構成としては「英文読解+日本語の論述」となるため、英語インプットして日本語でアウトプットできる時間を短縮できるかが問題を解く鍵になってきます。

英文読解を伴う課題文型問題について

課題文型(英文読解を伴う)に取り組むうえで

今回紹介する神奈川県立保健福祉大学の小論文問題の形式である【課題文型(英文読解を伴う)】は以下のことを意識して取り組みましょう。

課題文の正確な読み取り

まず、出題時に提示される文章(課題文)の内容を正確に理解する必要があります。この課題文は、特定のテーマや筆者の主張、データなどが含まれていることが多く、その内容を読み解く力、つまり読解力が問われます。また、同大学は英文読解もともなうため、英文を理解するための語彙力や、正確に訳すための英文法の知識も必要とされます。

論点の把握と要約

課題文の内容をただ読むだけでなく、その中心的なテーマや筆者の主張を正確に捉え、要約する能力も求められます。設問には、「課題文の要点をまとめよ」といった指示が含まれることもあります。今回の資料の場合、課題文は「いのちの終わり」における医療・ケアに関する内容であり、筆者の主張や問題意識を把握することが重要となります 。

自分の意見との関連付け

課題文で提示された内容を踏まえた上で、自分の考えや意見を述べる必要があります。単に課題文を要約するだけでは不十分です。課題文の内容を自分の意見の「出発点」として、賛成・反対の立場を明確にしたり、関連する具体例を挙げたりして、論を展開することが重要です。今回紹介している問題では、「『患者にとっての最善』とはどのようなことかをふまえ、あなたが看護師であったらどのようにかかわろうと思うか、あなたの考えを600字以内で述べなさい」とあり、課題文で提起されたテーマに対する自分の考えを述べる形式になっています 。

専門知識よりも論理的思考

課題文は、高校生が理解できる程度の内容であることがほとんどです。そのため、特定の専門知識があるかどうかよりも、課題文を論理的に読み解き、それに基づいて自分の考えを論理的に組み立て、説得力のある文章を書くことができるかが評価されます。今回の課題文も、人生の最終段階における医療・ケアという、専門知識がなくても考えられるテーマを扱っており、論理的な思考力を測る目的があると考えられます 。

第1〜3問 解き方のポイント

今回紹介している神奈川県立保健福祉大学の課題文型小論文は、文中の情報を元にしながら自身の考えを展開していきます。
ここでは第1問〜3問の内容理解を問うタイプの問題について解説を交えた解き方のポイントを紹介いたします。

第1問:空欄補充

第1問目は文脈に合わせて適切な単語を選ぶ問題がきます。
解き方のポイントとしては以下の内容です。

直前・直後の文章の確認

空欄補充は直前直後の文章の情報をもとにして、該当箇所の単語が決まっていくものになります。そのため、「前後」の文の内容を正確に掴むことが重要です。
そのため、選択肢の単語(例: associated、compared、covered)の意味を正確に理解し、文法的な整合性だけでなく、文意が自然につながるかを判断して解答をしていきます。

【第1問
問:本文中の(1)、(2)に入る最も適切なものを選び記号で答えよ
(1)選択肢:ア associated、イ compared、ウ covred
(2)選択肢:ア because、イ but、ウ that

【第1問解答解説】
(1)ア associated
「High temperatures are strongly (空所) with an increase in suicides」という文脈から、「強く関連している」を意味するア.associated が適切と判断できます。

(2)ア because
「The increase was greater in northern parts of the United States, perhaps(空所)these areas are less prepared to cope with heat waves than places like the Southwest 」という文脈から、空欄前が結果(増加が大きかった)を、空欄後が原因(準備ができていない)を示しているため、「〜なので、〜だから」という理由を意味する ア. because が適切と判断できます。

第2問:下線部説明

第2問目は下線部の内容を日本語で説明する問題になっています。
下線部説明も「何を指しているのか」が問われているため、該当箇所の前後の文章に注目するのを忘れないようにしておきましょう。

解き方のポイントとしては、下線部が「The gap(その格差)」と特定の名詞句であることを考え、直前の文脈を読み解き、「何と何」の間の格差を指しているのかを明確にしていくことです。

【第2問】
問:下線部① The gap とは何を指すか。日本語50字以内で答えなさい。
<該当箇所周辺の文>
A landmark study last year analyzed data on more than two million people with private insurance and found that emergency department visits for mental illnesses were significantly higher during the five or six hottest days of summer, compared with the coolest days of the same season. The increase was greater in northern parts of the United States, perhaps because these areas are less prepared to cope with heat waves than places like the Southwest.The gap was evident across a range of mental health conditions, including mood and anxiety disorders, stress disorders, schizophrenia, substance use disorders and self-harm .

【第2問解答解説】
解答例:夏の最も暑い日と最も涼しい日で比較した際の、精神疾患による救急治療室の受診の増加幅 。(49字)

下線部の直前には、「ランドマーク研究」の結果として、夏の最も暑い日の精神疾患による救急治療室(ER)の受診が、最も涼しい日に比べて著しく高かった(significantly higher)という事実が記されています。

「The gap(その格差)」は、この**「暑い日」と「涼しい日」との間で生じた受診率の「違い」、すなわち「増加幅」を具体的に指しています。後の文で「気分障害、不安障害など幅広い精神状態で、この格差が明白だった」と続くことから、このような解釈に繋げていきます。

第3問:内容一致

第3問目は本文全体の内容に一致した解答を選択肢から選ぶ問題になります。第1・2問目は局所的な文章の理解でも答えられる問題でしたが、第3問目は文章全体の理解を必要とする問題になります。

解き方のポイントとしては「正しいものを選ぶ」よりも「間違っているものを消す」という消去法が極力時間をかけずに解くポイントです。

【第3問】
問:本文の内容と一致しているものはどれか。次の(ア)~(オ)から2つ選び、記号で答えなさい。
<選択肢>
ア:暑さが精神衛生に与える影響について本格的に認識されるようになったのは2年ほど前からである。
イ:気温が高い夜は入眠しづらく、朝も早く起きられず、睡眠の質がより悪くなる。
ウ:暑さは多くの身体的変化を引き起こし、それが多くの感情的、精神的変化を導く。
エ:暑さはアレルゲンや汚染物質を増加させ、空気の質を悪化させるため、それだけで不安やうつ病を引き起こす可能性がある。
オ:慢性的な健康問題を抱える人以外は気温上昇の被害を受けにくい。

【第3問解答解説】
解答:ウ・エ
解説:

(ア) 気候変動が精神衛生上の問題として本格的に認識され始めたのは2年前、初めて委員会が設立された時である。
本文(英語):The mental health consequences of climate change have been gaining serious recognition over the past five years, culminating two years ago in the launch of a new committee.
正誤:❌ 解説:「本格的に認識され始めたのは過去5年間」であり、「委員会が設立されたのが2年前」です。

(イ) 気温が高い夜は入眠しづらく、朝も早く起きられず、睡眠の質がより悪くなる。
本文(英語):On warmer nights, people fall asleep later and wake up earlier, and the quality of their sleep is poorer.
正誤:❌ 解説:「朝も早く起きられず」とありますが、本文では「wake up earlier(より早く起きる)」と記述されています。

(ウ) 暑さは多くの身体的変化を引き起こし、それが多くの感情的、精神的変化を導く。
本文(英語):”So heat causes a lot of physical changes, which leads to a lot of emotional and mental changes.”
正誤:⭕️ 解説:シャー医師の言葉として、暑さが身体的変化を引き起こし、それが感情的・精神的変化につながると述べられています。

(エ) 暑さはアレルゲンや汚染物質を増加させ、空気の質を悪化させるため、それだけで不安やうつ病を引き起こす可能性がある。
本文(英語):Heat also increases allergens and pollutants, and worsens air quality, which alone can trigger anxiety and depression.
正誤:⭕️ 解説:暑さがアレルゲンや汚染物質を増加させ、それ(悪化した空気の質)だけでも不安やうつ病を引き起こす可能性があると記述されています。

(オ) 慢性的な健康問題を抱える人以外は気温上昇の被害を受けにくい。
本文(英語):Older adults, adolescents and people with pre-existing mental illnesses are particularly vulnerable, as are people who do not have housing or are of lower socioeconomic (749) status. Children, adolescents, older adults and those with chronic health problems are particularly vulnerable, the report cautioned.
正誤判定:❌ 解説:「慢性的な健康問題を抱える人以外は被害を受けにくい」という点に反し、本文では「高齢者、青年、既存の精神疾患を抱える人、住居のない人、低社会経済的地位の人」など、多くの集団が特に脆弱(vulnerable)であると述べています。

第4問 解き方のポイント

問4は、この試験の合否を分ける最も重要な問題です。単なる意見表明ではなく、与えられた英文の分析と看護学科の専門性を組み合わせた論理的な考察が求められます。

【第4問】
本文の内容を踏まえ、気候ストレス(climate distress)に対し、保健医療福祉の専門職としてどのように関わっていくべきか、あなたの考えを日本語800字以内で述べなさい。(650文字以上800文字以内)

1. 💡 解き方のポイント(論述の3原則)

ポイント①:英文からの引用と定義(「本文の内容を踏まえ」)

論述の説得力を高めるために、まず英文の内容を根拠として利用し、問題の背景を明確にします。

  • 問題の定義: 序論で、気候ストレスが単なる身体的苦痛ではなく、睡眠障害アレルゲン・汚染物質の増加といった要因を通じて、不安、抑うつ、既存精神疾患の悪化を引き起こす深刻な問題であると、本文の情報を使い定義します。
  • 脆弱な集団の特定: 特に高齢者、若年者、既存の精神疾患を持つ人、低社会経済的地位の人が脆弱である(本文の主張)ことを引用し、専門的介入が必要な対象を明確にします。
ポイント②:専門職としての多角的視点(「保健医療福祉の専門職として」)

看護学科の受験生として、医療・福祉の知識を活かした多角的な対策を提示します。関わり方を**「個人レベル」「集団・地域レベル」「システムレベル」**の3つに分けて考えると、論旨に広がりが出ます。

レベル専門職の役割と具体的な関わり方
臨床(個人)患者個人の健康状態のモニタリング(体温、心拍数など)、睡眠指導(熱帯夜の対処法)、精神的なケア(気候変動による不安への傾聴と心理的サポート)。
公衆衛生・予防(集団)脆弱集団の特定とハイリスク層への訪問指導、地域社会での**クーリングルーム(避暑施設)**などの情報提供と設置推進。
システム・政策気候変動とメンタルヘルスに関する知識の普及啓発(市民や他の医療専門職に対して)、多職種連携(福祉士、行政、環境専門家)の強化。
ポイント③:論理的な構成(三部構成の徹底)

制限字数内で論理を一貫させるために、必ず以下の三部構成で記述します。

構成字数目安役割とToDo
序論100字テーマの定義と結論の提示。本文の内容を簡潔に引用し、気候ストレスの深刻さを定義した後、「私は〇〇と〇〇の2点から関わるべきだと考える」と主張を明言する。
本論600字主張の展開と根拠の提示。設定した複数の関わり方(例:臨床的・公衆衛生的)について、一つずつ具体的に説明する。必ず**「なぜそれが必要か(本文のどこに根拠があるか)」**を示しながら論じる。
結論100字全体のまとめと将来への展望。本論の主張を再確認し、看護職を志望する者として、この問題にどう貢献していくかという意欲を示して締めくくる。

2. 📝 問4 解答作成のToDoリスト

問4の記述を始める前に、以下の手順を必ず実行してください。

  1. 論点決定: 本文から得られた原因(睡眠、汚染、既存疾患)を踏まえ、自身の関わり方の(例:予防と早期介入、または多職種連携)を2〜3点決定する。
  2. 構成設計: 序論、本論、結論の各段落で何を述べるかを箇条書きでメモし、字数配分を決める。
  3. 引用箇所の確認: 本論で使う英文の具体的なキーワード(例: “vulnerable” や “disrupted sleep”)を、日本語訳として記述に組み込む位置を確認する。
  4. 看護との関連づけ: 自分の提案がなぜ看護師(または保健師)でなければならないのか、その専門性と結びつくように言葉を選んで記述する。

英文読解を伴う課題文型小論文の対策

今回は神奈川県立保健福祉大学に焦点が当たった内容ですが、同行以外にも英文読解を伴った小論文試験を実施している看護学校も少なくはありません。
そのため、ここでは英文読解を伴う課題文型小論文の対策方法について紹介いたします。

Step1:英語の土台を固めて読解力を養う

小論文のスタートラインは「課題文を正確に読む力」です。特に、看護系の専門的なテーマに対応できる基礎力を築きましょう。

  1. 医療・看護系単語に慣れる: 一般的な受験単語に加え、過去問や医療ニュースで見かける専門用語(例: QOL, ethical, patient safetyなど)を重点的に覚えましょう。自分専用の単語帳を作るのが効果的です。
  2. 英文解釈力を鍛える: 長い英文でも、主語や動詞などの文の構造を正確に把握する力をつけます。標準的な英文解釈の参考書を繰り返し活用し、複雑な文でも意味を間違えずに理解できるようにしましょう。
  3. 長文読解の場数を踏む: 医療や科学的なテーマを扱った長文問題集を選び、時間配分を意識しながら量をこなします。

Step2:主張を掴む

単に和訳するだけでなく、「筆者が何を言いたいのか」を掴むことが小論文の鍵です。

  1. 逆接に注目して読む: 課題文全体を均等に読むのではなく、“but”“however” といった逆接の接続詞の前後を特に意識して読み、筆者の核心的な主張を見つけ出します。
  2. 論理構造をメモする: 各段落の要点や**筆者の評価(賛成/反対)**を短いメモで整理しながら読み進めます。具体的な事例(for example)は軽く流し、主張の部分を重点的に理解しましょう。
  3. 設問の要求を確認する: 設問が「要約型」なのか、「意見論述型」なのかを先に把握し、課題文を読む目的を明確にしておくと効率的です。

Step3:論理的な日本語で論述をする

読解で得た情報を基に、看護学生としてふさわしい論述を展開します。

  1. 看護・医療系の知識をインプット: 課題文のテーマに関連する時事的な話題専門用語(例: インフォームド・コンセント、地域包括ケア)の知識を整理し、論述の際の根拠や具体例として使えるように準備します。
  2. 基本構成で意見をまとめる: 小論文の基本構成(序論・本論・結論)に従い、論理的に書きます。
    • 序論: 自分の結論(意見)を先に提示する。
    • 本論: 結論の理由根拠を述べ、課題文の内容を適切に引用・言及する。
    • 結論: 全体の要点を再確認し、将来の展望を添えて締めくくる。

Step4:過去演習を行う

ステップ1~3で培った力を本番で発揮するために、過去問を使った実戦演習は欠かせません。

  1. 制限時間内に解く訓練をする: 過去問を解く際は、必ず試験本番と同じ時間を計って取り組みましょう。時間内に英文を読み切り、小論文を完成させるための時間配分を体に覚え込ませることが重要です。
  2. 傾向を徹底的に分析する: 過去数年分の過去問を分析し、**「出題されるテーマ」「英文の難易度」「設問のタイプ」「適切な文字数」**といった志望校独自の傾向を把握しましょう。
  3. 添削で弱点を克服する: 自分で採点するだけでなく、書いた小論文は必ず学校や予備校の先生に添削してもらいましょう。「英文の読み取りミス」や「論理展開の不備」など、自分では気づきにくい弱点を客観的に指摘してもらうことが、得点力アップに直結します。

上記4ステップを踏みながら合格を目指して受験対策を進めていきましょう。

さいごに

ここまで、記事をご覧いただきありがとうございました。
今回は英文読解を伴う課題文型小論文の対策を過去問を交えて紹介いたしました。
ただ、試験問題については年度ごとに変わっていくこともあるため、何がきてもいいように一通りいろんなパターンの小論文には触れておきましょう。

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