今回は東京女子医科大学 推薦入試の小論文対策として、入試過去問の解説と、解き方のポイントを紹介いたします。
また、問題の特徴についても紹介しておりますので、看護学部の入試で小論文がある方は必見の内容となっております。
目次
東京女子医科大学 看護学部
推薦入試 小論文対策
問題の概要
<出題形式>
テーマ型
<出題内容>
◎課題文を踏まえた「看護する喜び」についての論述(1問 800字以内)
問題の特徴
東京女子医科大学は過去3年間の問題の傾向として「医療倫理」にまつわる問題が出題されています。そのため、医療に関する知識だけでなく「自分はどう考えるか」という主体的な考え方も必要とされる問題です。
解き方のポイント(取り組むにあたって)
小論文を解くうえで必要な3つの力
論理的思考力
テーマに対する自分の主張を明確にし、それを裏付けるための根拠と結論を一貫性を持って結びつける能力です。自分の考えを筋道立てて説明し、論理の飛躍や矛盾を防ぐことで、採点者を納得させる文章構成力が求められます。
専門知識・時事理解
医療・看護分野が抱える倫理的課題や、社会情勢に関する最新のニュースへの深い関心が必要です。具体的な事実や背景知識に基づいた議論を展開することで、抽象論に終わらない、深みのある説得力のある小論文を作成するために必須の力となります。
構成力・表現力
限られた時間と字数の中で、小論文の基本である序論・本論・結論の型を正確に守り、意見を構成する力です。また、採点者に伝わりやすく、誤解を与えない正確な文章(文体・言葉遣い)で論理的に意見を記述する表現能力も重要となります。
テーマ型小論文を解くうえでの解き方ポイント
【ステップ 1】テーマの分析と立場決定
まず、テーマに含まれる核心的なキーワードを特定し、問われている内容が単なる説明なのか、「賛否」「メリット・デメリット」「今後の展望」のどれなのかを正確に把握します。そして、主張の軸がブレないよう、序論で明確に「私は〜であると考える」と自分の立場を決定することが重要です。
【ステップ 2】論点整理と骨子(アウトライン)の作成
決定した立場を支える論点(根拠)を複数(2〜3つ)書き出し、論点整理を行います。その後、序論、本論(根拠1、根拠2、反論への再反論など)、結論という構造の骨子を設計し、各論点で使用する具体例や専門知識を割り当てます。最後に、各パートに使うおおよその字数を決め、執筆に備えます。
【ステップ 3】実際に書いて、見直しをする
作成した骨子から逸脱しないよう、論理の流れを意識しながら一気に書き上げます。文章表現では、接続詞を適切に使い、段落の初めと終わりで流れをスムーズにすることを心がけましょう。最後に、残り時間で誤字脱字、字数制限の順守、そして主張が一貫しているかを最終確認します。
東京女子医科大学看護学科 推薦入試
小論文 過去問解説
ここでは、2025年度の推薦入試で実際に出題された問題の解説を行なっております。
問題に焦点を当てた解き方のポイントを紹介しておりますので、受験勉強の参考にしていただければ嬉しいです。
問題の概要(テーマ理解)
テーマ: あなたが考える「看護する喜び」とはどのようなものか。
課題文の視点: 課題文は、本学の前身に尽力した湯槇ます氏の「看護学と医学は別物である」という視点と、「看護する中で迷い苦しみつつも看護する喜びを手にしたものでなければ、本当には共有できない」という言葉を引用しています。
要求事項: 経験(想像でも可)を踏まえ、自身の考えを800字以内で記述すること。
→ この問題は、単なる「やりがい」ではなく、「迷いや苦しみ」を乗り越えた先にある、看護に特化した本質的な「喜び」を問うています。
解き方のポイント(合格するための思考プロセス)
① 引用文の深掘り:「迷い苦しみつつも」という前置きが重要です。喜びを語る前に、看護の現場における困難や葛藤(患者の死、治療方針のジレンマ、倫理的な問題など)を認識していることを示しましょう。喜びは、その困難を乗り越えるプロセスと強く結びついている必要があります。
② 「医学とは別物」の意識:医学が「病気を治すこと」に主眼を置くのに対し、看護は「人間そのものを支え、生活の質(QOL)を高める」ことにあります。あなたの考える喜びが、投薬や手術といった医学的処置ではなく、患者との関わりや、生活に寄り添う援助によって生まれるものであることを明確にしましょう。
③ 経験と結びつける:「経験してきたことをふまえ」とあるため、ボランティア、部活動、家庭内での介護経験など、他者への援助や協働の中で、相手の苦しみに寄り添い、その結果として達成感や感謝を得た具体的なエピソードを根拠として提示します(想像でも可)。
文章構成(800字の理想的な型)
【序論】(約150字):湯槇ます氏の言葉に言及し、看護の喜びは困難の先にあることを認める。結論(自分の考える「看護する喜び」の定義)を簡潔に提示し、文章の方向性を決定する。
【本論①】「迷い・苦しみ」の具体化(約250字):看護師が直面する精神的、倫理的、肉体的な困難を具体的に述べる。なぜ看護の現場に迷いが生じるのか、「医学との違い」という観点から論じる。
【本論②】喜びの根拠となる経験・想像(約300字):あなたの考える喜びが、過去の経験(例: 誰かを援助した体験)や、看護師になった場合の想像のどの瞬間に生まれるかを描写する。「患者の主体性回復」「人としての成長への貢献」など、看護独自の視点と結びつける。
【結論】(約100字):序論で述べた「喜びの定義」を再度強調する。この喜びを手にするため、貴学でどのように学び、看護の道を極めたいかという決意を述べて締めくくる。
対策ポイント
看護哲学への理解
湯槇ます氏が引用された背景には、同氏が訳したナイチンゲールやヘンダーソンといった近代看護の思想への理解を問う意図があります。これらの思想を改めて確認しましょう。
対比構造の利用
「迷い・苦しみ」と「喜び」を対比させることで、文章に深みが増します。単にポジティブな話をするのではなく、葛藤を乗り越えるプロセスを描写することが評価を高めます。
医療系時事問題との統合
AI化や地域包括ケアなど、現在の医療が抱える「苦しみ」の要因に言及しつつ、その中で看護職が果たす役割がどのように「喜び」につながるか論じられると、高い時事理解力を示せます。
テーマ型小論文の対策
テーマ型小論文とは
テーマ型小論文とは、与えられた特定のテーマ(例:少子高齢化、AIの活用、環境問題など)について、自分の意見や考察を論理的に述べる形式の小論文です。
【ステップ1】 テーマに関する基礎知識の習得
テーマに関する基礎知識の習得:小論文で取り扱われやすい「頻出テーマ」(社会、科学、環境、医療、教育など)について、現状、課題、原因、解決策などの基本的な情報を幅広くインプットします。
ニュースや記事の活用: 新聞、ニュース解説、専門家のコラムなどを読み、多角的な視点や客観的なデータを学びます。
キーワードの理解: テーマごとの「専門用語」や「概念」を正確に把握します。自分なりの考えを構築: 知識をインプットするだけでなく、「この問題に対して自分はどう考えるか」という「仮説」や「立場」を常にもつように意識します。
【ステップ2】 小論文の構成と型の理解・習得
小論文の構成と型の理解・習得:論理的で説得力のある文章を書くために、小論文の「基本的な構造」を徹底的に学び、使いこなせるようにします。
三部構成の基本
序論(問題提起): テーマに関する現状認識と、自分の「主張」(結論)を明示します。
本論(論証): 主張を裏付ける「理由」や「具体例」、「データ」などを挙げ、論理的に説明・展開します。反対意見への「反論」を盛り込むと、より説得力が増します。
結論(まとめ): 序論で述べた「主張を再度強調」し、将来的な展望や提言で締めくくります。
指定字数での時間配分: 必要な文字数に応じて、各パートにどの程度の分量(文字数や時間)を割くか、事前に計画を立てておきます。
【ステップ3】 論理展開の訓練と表現技術の向上
論理展開の訓練と表現技術の向上:説得力を高めるための文章表現と、論理の飛躍を防ぐための思考の訓練を行います。
接続詞の的確な使用:「しかし」「したがって」「なぜなら」などの接続詞を正しく使い、文章間の「因果関係」や「対立関係」を明確にします。
「主張→理由→具体例→再主張」の繰り返し練習:意見を述べる際、必ず「根拠」と「裏付け」となる事例をセットで提示する習慣をつけます。
表現の工夫: 曖昧な表現を避け、「簡潔」で「断定的な表現」を使うように心がけます。「文体も統一」します。
【ステップ4】 過去問演習(実践)
過去問演習(実践):習得した知識と型を、実際の試験形式でアウトプットする練習を繰り返します。
時間測定: 必ず「制限時間」を設けて取り組み、時間内に「構成メモ作成」から「書き上げ」までを完了させます。
添削と見直し: 自分で書いた小論文を読み返し、主張が明確か、論理の破綻がないか、誤字脱字がないかをチェックします。客観的な添削を依頼し、「自分の弱点」を把握します。
頻出テーマの傾向分析: 志望校の「過去問」を複数年分確認し、どのような分野から出題される傾向があるかを分析することで、「重点的に対策すべきテーマ」を絞り込みます。
さいごに
ここまで、記事をご覧いただきありがとうございました。
今回は東京女子医科大学の過去問解説を交えて、小論文対策の方法を紹介いたしました。
ただ、試験問題については年度ごとに変わっていくこともあるため、何がきてもいいように一通りいろんなパターンの小論文には触れておきましょう。
現在、弊校では小論文のパターン別の対策記事を出しております!
その他のパターンの対策を知りたいという方はぜひ、こちらもご覧ください!

