近年、大学入試全体で導入が増えてきている入試方法に【総合型選抜(旧AO)入試】があります。
学力試験からは測れない、学生の資質に焦点が当たった入試方法で、有名大学でも総合型選抜を入試方法に導入をする大学も増えてきました。
試験の方法も小論文や、面接だけでなく模擬授業・ワークショップへの参加したうえでのレポート試験など、一口に「総合型選抜」と言っても様々な方法で試験が実施されます。
今回はその中の一つである「プレゼンテーション」という試験方法に焦点を当てた対策を紹介していきます。総合型選抜での受験を考えている受験生必見の内容です!
目次
総合型選抜の基本と動向
【大学受験】総合型選抜(旧AO入試)の基本と動向
まず初めに知っておきたいのは「総合型選抜とは何か」です。総合型選抜(旧AO入試)は、学力試験だけでなく、受験生の個性や意欲、高校生活での取り組みを多角的に評価する入試方法です。ここでは、その概要と具体的な選抜方法を紹介します。
総合型選抜とは何か
定義と目的:「学力の3要素」を多面的に評価する:総合型選抜は、受験生が大学のアドミッション・ポリシー(求める学生像)に合致しているかを、書類審査や面接、プレゼンテーションなどを通じて、多面的・総合的に評価する入試方法です。
目的: 知識・技能だけでなく、思考力・判断力・表現力、主体性・多様性・協働性といった「学力の3要素」を評価することに重点が置かれます。 名称変更: 2021年度(令和3年度)入試より、従来の「AO入試」から「総合型選抜」に名称が変更されました。 特徴: 出願時期が早く(主に9月以降)、年内に合否が決まるケースが多いです。
総合型選抜を行う大学数の推移と動向
【最新動向】導入大学と入学者の割合は増加傾向:総合型選抜は、現在の大学入試において非常に重要な位置を占めています。文部科学省の調査によると、国公私立大学の多くがこの方式を導入しており、その割合は年々増加しています。
導入大学: 現在、国公私立大学の約8割が入試に総合型選抜を導入しています。(出典: 文部科学省関連資料に基づく) 入学者割合: 全体の入学者に占める総合型選抜による割合も増加傾向にあり、特に私立大学でこの傾向が顕著です。大学全体として、多様な学生を受け入れる方針が強まっていることを示しています。 評価の変化: 従来の「AO入試」時代に比べて、単なる熱意だけでなく、書類や面接における学力評価(レポート、プレゼンなど)が重視されるようになっています。
総合型選抜で採用される試験形式
多角的な評価を可能にする主な選抜方法
- 書類審査 (志望理由書、調査書など): 最も基本となる審査。特に志望理由書は、これまでの経験と大学での学びの接続を論理的に示す必要があります。
- 面接 (個人面接、グループディスカッション): 受験生の熱意、コミュニケーション能力、主体性を評価します。大学によっては複数回実施されます。
- 小論文・レポート: 特定のテーマについて論理的に思考し、文章で表現する能力を測ります。これにより基礎学力を確認します。
- プレゼンテーション・模擬授業: 事前にテーマを与えられ、発表を行います。特に表現力や発想力、積極性が評価されます。
【総合型選抜】プレゼンテーション試験 徹底対策と攻略法
総合型選抜におけるプレゼンテーション試験は、皆さんの「思考力・判断力・表現力」を大学側に伝える最大のチャンスです。ここでは、主要な形式とその対策を具体的に解説します。そのため以下の内容を踏まえて試験対策などに臨んでいきましょう。
プレゼンテーション試験の主な形式
テーマ自由型(自己PR型)
高校での具体的な活動実績や、大学で何を学びたいか、将来の展望など、自分自身を深く売り込む形式です。
課題探求型(テーマ事前提示型)
出願時や事前に特定のテーマや課題が与えられ、それに対する分析、考察、解決策を論理的に発表します。(例:少子化問題、AIの倫理的側面など)
模擬授業・講義型
専門分野に関する知識を、面接官(学生役)に分かりやすく教える能力が試されます。高校の授業の延長線上にあるテーマが多いです。
形式別の評価ポイント
テーマ自由型
大学の理念と受験生の情熱・一貫性。なぜこの大学でなければならないのか、活動実績と将来の目標に論理的なつながりがあるか。
課題探求型
論理的思考力と専門分野への基礎的な理解。情報収集能力、分析力、提示された課題に対する独自かつ実現可能な解決策を提案できるか。
模擬授業型
明快な説明能力とコミュニケーション力。複雑な内容を平易な言葉で正確に伝え、聴衆(面接官)の反応を見ながら進められるか。
プレゼンテーションで求められる3つの力
論理的構成力(ストラクチャー): 「結論→理由・根拠→具体例→再結論」のように、話の構成が明確であること。説得力のある「話の筋道」を立てる力が不可欠です。
表現力・発信力(デリバリー): 資料や言葉だけでなく、声のトーン、目線、ジェスチャーなど非言語的な要素も意識し、聴衆を惹きつける力が求められます。
主体性・対話力(質疑応答): 質疑応答で、予想外の質問に対しても論点をずらさず、自分の意見を崩さずに応答する粘り強さや柔軟性が重要です。
形式別・段階別 受験対策
テーマの深掘りと資料作成
テーマの選定後、その分野の最新情報や学術論文までリサーチし、発表のオリジナリティと専門性を高めます。スライドは情報を詰め込みすぎず、視覚的に訴えかけることを意識しましょう。
本番を想定した時間配分練習
発表原稿(スクリプト)を作成し、必ずストップウォッチで計りながら練習します。制限時間の5秒前に終了できるのが理想です。時間オーバーは大きな減点対象になります。
質疑応答の想定問答集作成
面接官から飛んでくるであろう「意地悪な質問」「内容の根拠を問う質問」「プレゼンで触れなかった周辺知識」を想定し、回答を事前に準備しておくと冷静に対応できます。
【最重要】第三者による客観的なフィードバック
自己満足の発表に終わらせないためにも、先生、友人、保護者など第三者に必ず発表を聞いてもらいましょう。「声が小さい」「視線が泳いでいる」「スライドの文字が多い」など、自分では気づけない欠点を発見し、改善を繰り返すことが合格への最短ルートです。
【看護学部向け】プレゼンテーション試験 徹底対策と攻略法
総合型選抜における看護学部のプレゼンテーション試験は、受験生の倫理観、共感力、そして看護に対する強い意欲を伝える重要な機会です。ここでは、看護学部特有のテーマと対策を具体的に解説します。
看護学部のプレゼンテーション試験の主な形式
形式 A: 志望理由・自己の活動と関連付けたテーマ
高校でのボランティア経験や、看護師を目指すきっかけとなった活動実績を基に、看護のテーマと関連付けて発表する形式です。単なる経験談ではなく、そこから得た学びを専門性にどう繋げるかが問われます。
形式 B: 医療・倫理的課題の考察
「延命治療の是非」「AIと看護」「地域医療格差」など、医療現場が抱える具体的な課題に対する分析と提案を求める形式です。倫理観や社会意識が問われます。
形式 C: 看護実践のシミュレーション
特定の症例や場面(例:認知症患者への対応)が与えられ、その場面で自身がどのように看護を行うかを論理的に説明する形式です。患者への共感性と判断力が試されます。
看護学部で重視される形式別の評価ポイント
大学側が最も重視する要素:「人間性」と「論理性」のバランス
自己活動型
倫理観と動機の一貫性。単なる「優しさ」だけでなく、看護の専門性や学問との結びつきを理解し、なぜこの大学で学びたいのかという強い意志があるか。
医療・倫理的課題型
多角的思考力と倫理観。一つの意見に偏らず、患者・家族、そして医療従事者の視点に立って、課題を多面的に考察できるか。実践シミュレーション: 対話能力と共感性。状況を正確に把握し、対象者の気持ちに寄り添いながら、根拠に基づいた適切な援助計画を立てて説明できるか。
看護職に求められる3つの資質
試験を通じて示したい3つの能力:多角的・倫理的思考力
医療現場には唯一の正解がない問題が多く存在します。物事を多方面から捉え、倫理的なジレンマに対する自分なりの考察を述べられるかが、将来のリーダーシップ能力として評価されます。
共感性と対話による表現力
患者やチームメンバーに対して、共感的な姿勢を持ちつつ、正確に情報を伝達・説明するための、穏やかで説得力のあるコミュニケーション能力が求められます。
柔軟性と学びへの意欲
質疑応答で専門外の話題が出た際に、「なぜそれを学んでいきたいのか」という学びへの強い意欲と、知識を吸収する柔軟性を示すことが重要です。常に新しい知識を追い求める姿勢を示しましょう。
看護学部特化型 受験対策
実践的な対策ステップ:看護の専門用語・疾患知識のリサーチ
テーマに関連する基礎的な看護学の用語や、最新の医療ニュースを調べ、専門性を裏付けます。高校の生物や倫理の知識を活かし、学びの土台を示すことが重要です。
患者・多職種連携の視点を取り入れる
常に「患者にとってどうか」「チームとしてどう動くか」という医療現場の視点を意識して構成します。単なる理想論ではなく、根拠と現実的な提案を心がけます。
倫理観を試す質疑応答のシミュレーション
プレゼン内容を批判的に問う質問(例:「あなたの提案はコスト的に無理があるのでは?」)や、倫理観を試す質問に対する回答を準備しておくと冷静に対応できます。
【最重要】第三者による客観的なフィードバック
自己満足の発表に終わらせないためにも、先生、友人、保護者など第三者に必ず発表を聞いてもらいましょう。特に、感情に訴えかけるだけの発表になっていないか、「論理性」の観点から客観的な評価を受けることが重要です。
【看護学部向け】プレゼンテーション試験 成功の「型」
プレゼンテーション試験では、「何を伝えるか(内容)」と「どう伝えるか(話し方)」の2つがとても大事です。看護師に必要な「論理的な考え方」と「相手を思いやる気持ち」が伝わるように、以下のポイントをチェックしましょう。
プレゼンの「作り方」:話の構成と内容
相手に「なるほど!」と思わせる話の流れで作る!
- テーマと「一番伝えたいこと」をはっきりさせる
伝えたい課題を一つ決める: 出されたテーマから、あなたが最も伝えたい問題点や解決策を一つに絞りましょう。日頃から医療や看護のニュースを見て、自分はどう思うか整理しておくことが大切です。
ゴールを決める: 「このプレゼンで聞き手に何を分かってほしいか」という目的を短い言葉(20〜30文字)でまとめ、話がブレないようにします。 - 話の順番を決める(論理的な流れ)
短い時間(3〜5分)で話す場合は、次の順番で話すと、聞いている人が「分かりやすい」と感じてくれます。
導入(つかみ): テーマと、なぜそのテーマを選んだかを短く話し、面接官の興味を引きつけます。
本題(分析・提案): 今の問題点の根拠となるデータを見せながら説明し、それに対するあなたの具体的な解決策を話します。解決策に「看護師としてどうするか」という視点が入っていると評価が高いです。
結論(まとめ): 一番伝えたかったメッセージや大事なポイントをもう一度話して、話を終わりにします。
質問への準備:「ここが弱点かも」と思う部分や、反対の意見が出そうな質問を予想して、答えを用意しておきましょう。 - スライドの作り方:シンプルで分かりやすく!
図やグラフを活用: 文字ばかりのスライドは避け、図やグラフ、写真を上手に使って、見ただけで内容が伝わるように工夫しましょう。スライドは「話すのを手伝うもの」で、読み上げるためのものではありません。
文字は大きく、箇条書きで: 大事なポイントは箇条書きにし、遠くからでも読める文字の大きさで作ります。
枚数を絞る: 決められた時間内に話せるように、スライドの枚数は最小限に抑えましょう。
プレゼンの「話し方」:自信と気持ちを伝える態度
共感と自信を伝える話し方とふるまい
- 熱意が伝わる表情と声:アイコンタクト
面接官(聞き手)一人ひとりの目を意識して、熱意が伝わるように話しましょう。視線がキョロキョロすると、自信がないように見えてしまいます。
声のメリハリ: 棒読みにならないよう、声の調子を変えて話します。特に大事なところは、少しゆっくり、強めに話しましょう。
話すスピード: ゆっくり、はっきり話すことを心がけます。緊張で早口にならないよう、普段から意識して練習してください。 - 時間と姿勢を守る
決められた時間を守るのはとても大切です。練習でストップウォッチを使い、少し早めに終わるように調整しましょう。時間がオーバーすると、大きく評価が下がります。姿勢と態度: 落ち着いて、自信をもって堂々と話しましょう。メモを見すぎず、面接官に話しかけるようにするのがポイントです。 - 「間(ま)」を使って引き込む
特に大切なことを話す前や、面接官に考えてほしい時には、少し立ち止まって「間」を取ると効果的です。沈黙を恐れず、この「間」を上手に使うことで、メッセージがより深く伝わります。
合格のための仕上げと練習
- 時間を測って、数をこなす
常に時間を測りながら、声に出して何度も練習しましょう。原稿を全部覚えるのではなく、伝えたい「大事なポイント」だけを覚えて、自然な言葉で話せるようになるのが理想です。 - 自分の姿を録画・録音して見る
自分のプレゼンをスマホなどで録画・録音して見てみましょう。「分かりにくいところはないか」「声は聞き取りやすいか」「ジェスチャーは変じゃないか」などをチェックし、直すことを繰り返します。特に「話し方のクセ」に気をつけましょう。 - 【超重要】先生や友達に必ず見てもらう
先生や友達など、第三者にプレゼンを聞いてもらい、感想をもらうことが一番効果があります。特に、その分野に詳しくない人にも「あなたの話は分かりやすい」と言ってもらえるかが重要です。これで、自分だけの満足で終わらない、ちゃんと伝わるプレゼンが完成します。
総合型選抜の対策は、基本的に学力で合否を判断する一般入試と異なり、対策が難しい傾向にあります。
ですが、正しくポイントを押さえて対策をすることで、自身の魅力や熱意を存分に伝えることができるのが、学力で合否が決まることの多い一般入試と比較した際の大きなメリットになります。
さいごに
最後まで本記事をご覧いただきありがとうございました!
本記事で紹介した内容が皆さんの大学受験の参考になれば嬉しいです!
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