目次
群馬大学看護専攻 推薦入試 小論文対策
今回は群馬大学 推薦入試の小論文対策として、入試過去問の解説と、解き方のポイントを紹介いたします。
また、問題の特徴についても紹介しておりますので、看護学部の入試で小論文がある方は必見の内容となっております。
問題の概要
<出題形式>
課題文型(和文+英文)
<出題内容>
小論文Ⅰ:英文読解(5問)
小論文Ⅱ:課題文読解(2問)+課題文読解(2問)
小論文Ⅲ:図表読み取り(4問)+選択での論述問題(1問)
問題の特徴
群馬大学医学部保健学科の小論文は、過去の傾向と最新の出題から、「複合的な知識と能力の総合評価」を重視している点が最大の特徴です。
特筆点(3点)
- 三部構成と理系知識の要求: 小論文I(英文読解と計算)、小論文II(和文読解と論述)、小論文III(資料分析と理科選択)からなり、特に英文読解力と、データ分析・自然科学(物理・化学・生物)の知識が必須です。
- 多様な字数制限への対応: 40字、60字といった極めて正確な短文要約から、200字〜400字の意見論述まで、設問ごとに要求される表現形式が多様です。
- テーマの専門性と社会性: iPS細胞の発見における「必要と偶然」や、AI時代の社会運営(マネジメント)など、科学の進展と保健医療の現場に直結する課題解決志向のテーマが中心です。
群馬大学は他校の小論文と試験と比較して、細かな記述問題が多い傾向にあります。
論述問題に関しては、少ない字数で解答をする必要があるため、的確な内容理解力や情報処理力が求められます。
解き方のポイント(取り組むにあたって)
解くうえで必要な力(3点)
- 1 英語力と理系知識を統合する「複合思考力」 英文を読み、その内容(減塩技術など)に関連する計算問題や数値を扱うため、英語読解、情報処理、そして科学的な知識を同時に運用する能力が必要です。(ファイル内小論文I, III)
- 2 短い字数での「正確な情報抽出と要約力」 解答として文章中の語句を抜き出したり(問4)、文中の数字のみを使って範囲を示したり(問2)する問題があるため、出題者の意図を正確に読み取り、厳密な字数制限内で過不足なく答える力が求められます。(ファイル内小論文I, II)
- 3 課題と自己経験を結びつける「論証力」 iPS細胞やマネジメント論といった専門的な内容に対し、自分自身の経験を踏まえて意見を論理的に述べる設問(問2)があるため、抽象的な概念を具体的な行動に落とし込む力が不可欠です。(ファイル内小論文II)
和文の課題文型小論文の解き方のポイント
- 筆者の問題提起と論理構造を整理する 文章全体を読み、「序論・本論・結論」の構造を把握します。特に「しかし」「つまり」といった接続詞に注目し、筆者が最終的に何を最も言いたいのか(核となる主張)を明確にします。
- 抽象的な概念を具体例に置き換える訓練をする 「マネジメント」「偶然性」「責任」など、抽象的な言葉が使われている場合、それを自分自身の学校生活やボランティア経験といった具体的な場面に置き換えて説明できる準備をしておきます。
- 設問の「指定要素」を絶対に外さない 「自分自身の経験を踏まえて」「下線部(2)について」など、解答に必ず含めるよう指示された要素は、文章構成のどの位置(序論か本論か)で使うかを事前に計画します。
英文の課題文型小論文の解き方のポイント
- 医療・科学分野の専門用語に慣れておく Health Science (保健科学), intake (摂取量), nutritional (栄養上の)など、医療・健康分野でよく使われる英単語や専門用語を事前にチェックし、速読力を高めます。
- 設問の答えとなる箇所を英文中で特定する 問1〜問5は、ほぼすべてが文章からの情報抽出です。設問(例:スプーンを最初に開発した理由)に対応する箇所を英文中に見つけ出し、それを正確に日本語に訳して字数内に収めます。
- 計算や数値の根拠が英文のどこにあるか確認する 設問で数値を問うている場合(例:不満と答えた人の割合)、その計算に必要な数字が英文中のどの段落(例:(2)や(3))に書かれているかを迅速に特定する訓練をします。
複合的な問題の解き方のポイント
- 図表から「傾向」と「特異点」を読み取る 熱中症の死亡数などのグラフを見る際、「全体的な傾向(増加/減少)」と「特に目立つ年(特異点)」、そして「性別・年齢層ごとの違い」をまず把握し、それを論拠として使います。
- 設問ごとに複数の図表を統合して考察する 問4のように、複数の図表(図1, 図2, 表)と外部情報(未来の気温予測)を組み合わせて考察を求められる場合、それぞれの情報がどう連動し、結論(熱中症死亡数の増加予測)を導くかを整理します。
- 理科選択問題は得意分野を迅速に選ぶ 物理(核反応)、化学(有機化学の反応)、生物(遺伝)から1題を選択する形式は、捨て問を作らず自分が最も点数を取れる分野を瞬時に判断し、確実に記述できるように準備しておくことが得点に直結します。
群馬大学保健学科 推薦入試
小論文 過去問解説
ここでは、実際に群馬大学保健学科の2025年度推薦入試で出題された問題の解説を基に、小論文対策を紹介していきます。受験勉強をされる際の参考になれば嬉しいです。
群馬大学小論文問題解説
小論文 I:英文読解と短答・計算
問題の概要
低塩分食品の塩味を電気で増強する「エレキソルト スプーン」に関する企業ニュースリリース(英文)が課題文です。日本の塩分摂取量の問題点や製品開発の背景が述べられています。設問は、技術内容の説明、図表を用いない計算や数値の読み取り、穴埋めなど、知識と正確な読解力を問う短答形式が中心です。
解き方のポイント
- 英文読解は「速さと正確さ」が命 問題1〜5はすべて正確な情報を探し出す作業です。英文をすべて訳すのではなく、設問のキーワード(例:technology, salt intake, reason)から必要な段落を特定し、その情報だけを正確に日本語に訳して解答欄に収めます。
- 数値問題は文章内の比率を正確に計算する 問3(回答者全体の何パーセントが不満か)のように、文章中に書かれている割合(60%が問題を認識、その80%が不満)を掛け合わせるなど、与えられた数値を冷静に処理する計算力が求められます。
- 解答は「指定された字数・語句」で完結させる 問4・問5のように「単語2語からなる文中の語句」や「理由」を答える際は、自分の意見ではなく、課題文に書かれている情報を過不足なく抜き出すことが重要です。
対策ポイント
- 医療・科学ニュースの英文記事を読み慣れておく VOANEWS Learning Englishや海外のニュースサイトのヘルスサイエンス関連記事を定期的に読み、専門用語やアカデミックな表現に慣れておきます。
- 速読しながら「設問が問う情報」をマークする訓練をする 問題文を読む前に設問をチェックし、何を聞かれているかを意識しながら英文を読み進め、答えの根拠となる箇所をすぐに見つけられるように訓練します。
小論文 II:和文読解と意見論述
問題の概要
この大問は、2つの独立した課題文(山中伸弥氏のiPS細胞発見の経緯/ドラッカーのマネジメント論)で構成されています。科学の進展と組織論という異なるテーマを扱い、いずれも自己の経験を踏まえた200字の意見論述を求めています。論理的な要約力と、自分の経験を結びつける応用力が試されます。
解き方のポイント
- 「必要は発明の母、偶然は発明の父」を自分の経験に置き換える 山中氏の文章では「目標(必要性)」と「予期せぬ発見(偶然)」が発明を生む核です。これを、あなたが目標に向けて努力した中で「予想外の結果から新しい道を見つけた経験」として置き換え、結びつけて説明します。
- 「マネジメント」を「学生生活」の課題解決に活用する ドラッカーの文章が説く「人を活かすマネジメント」の考え方(自発性、協働)を、入学後の学生生活(例:実習チーム、サークル活動)でどう具体的に実践したいかという行動計画として述べます。
- 要約は「何を答えるべきか」の指示に従い、簡潔にまとめる 問1(山中博士の研究進展を150字で)や問2(マネジメント本来の仕事を100字で)は、長い文章から筆者の重要なメッセージだけを正確に抜き出して、指定字数内に収めます。
文章構成(例:問2(2) 下線部についての意見 200字)
- 【序論:40字】 マネジメントの目的(自由で躍動する組織)に強く賛成することを述べ、自身の経験を通じて得たチームづくりの重要性を提示します。
- 【本論:120字】 入学後の具体的な活動(例:グループワーク)を挙げ、メンバーの「自発性」を引き出すために、権限やルールではなく「目的の共有」を最優先にするという行動方針を説明します。
- 【結論:40字】 自律的に学び、創造的に問題解決に取り組む姿勢こそが、保健医療の現場でチームの成果を最大化するために必要不可欠だと結論づけます。
対策ポイント
- 自分の過去の経験を「論述の型」に合わせて整理しておく 部活動や委員会、アルバイトなどで「問題解決した経験」「偶然から学んだ経験」「チームをまとめた経験」を、それぞれ起承転結で説明できるように準備しておきます。
- 論説文を「主張と根拠」に分解する練習をする 本文の内容を「なぜ筆者はこの例を出したのか」と自問自答しながら分析し、その論理構造を200字程度の論述につなげられるように練習します。
小論文 III:資料分析と理科選択
問題の概要
熱中症の死亡数・救急搬送データを示す図表(グラフ3点、表1点)を分析する問題(全員解答)と、物理、化学、生物の3分野から1問を選択して解答する問題(選択解答)で構成されます。資料分析能力と理系基礎知識の双方を問う、本学独自の複合問題です。
解き方のポイント
- グラフの「傾向」と「比較」を明確にする(問1, 問2) 図1では「死亡数の年次推移」と「65歳以上割合の推移」の関係を、図2では「2つの異なる年代」の死亡数のピーク年齢層を数値を使って比較し、増加傾向や年齢構造の変化を明確に記述します。
- 「予想」問題はデータと根拠を繋げて論理的に述べる(問4) 気温上昇の予測データと、図表から読み取れる「高齢者の割合の高さ」や「発生場所(住居・道路)の多さ」などの事実を結びつけ、具体的に何が増加するかを論理的に予想します。
- 理科選択問題は「解ける問題」を正確に選んで時間を使う 物理、化学、生物の中から、最も短時間で満点が狙える分野を選びます。知識問題に見えても、論述力が問われるため(例:核反応の理由、化学反応の過程)、用語の定義や反応の仕組みを正確に説明できるように準備が必要です。
対策ポイント
- 保健医療に関する政府の統計資料に慣れておく 厚生労働省や環境省などの公的な統計(例:人口動態調査、国民生活基礎調査)のグラフを見て、「最も高いのは何か」「増減の幅はどうか」など、データの読み取り方を練習します。
- 理科の基礎分野を「説明できるレベル」にしておく 高校理科の基礎的な原理(例:遺伝形式、核反応の質量欠損、簡単な有機化学反応)を、公式や記号だけでなく、言葉で分かりやすく説明できるように準備しておきます。
複合型小論文の対策について
ここでは群馬大学のように複合型の小論文の対策方法を紹介いたします。
複合問題は単純に小論文演習をこなすだけではできない、非常に難しい問題の形式です。
そのため、以下のステップを踏んで対策を進めていきましょう。
英文読解・知識問題型小論文対策4ステップ
ステップ1: 医療・科学分野の専門用語に慣れる
海外の医療ニュースや科学記事(英語)を読み、ヘルスケア分野でよく使われる英単語や表現を重点的に覚えます。和訳だけでなく、英語で内容を理解するスピードを意識します。
ステップ2:設問キーワードからの情報特定訓練
問題文を全部読む前に設問を読み、キーワード(例: “reason”, “definition”, “effect”)から答えが含まれる段落を素早く見つけ出す練習を重ねます。
ステップ3: 短文で「情報」を正確に伝える練習
英文から得た情報を、指定された字数(例: 50字、80字)や、文章中の語句のみを使用して、過不足なく日本語で表現する力を磨きます。
4 過去問演習と時間配分の徹底 過去問や類題を使って、英文読解・短答・計算をすべて含め、制限時間内に解答を完了させる練習を繰り返します。特に計算ミスがないか、厳しくチェックします。
和文読解・意見論述型小論文対策4ステップ
ステップ1:論理構造を掴み、筆者の意図を理解する
文章全体を読み、筆者の最終的な主張は何か、その主張を支えるためにどのような事例や根拠が使われているかを分析し、論理のつながり(構造)を把握します。
ステップ2:自分の意見を「対話」させる練習
筆者の主張に対し、「自分は賛成か反対か、あるいは異なる視点を持っているか」を明確にします。その上で、自分の意見の根拠を具体例と結びつけて整理します。
ステップ3:自分の経験を論述に効果的に組み込む
「マネジメント」「偶然の発見」など、出題テーマに合わせた自分の過去の具体的な経験を複数パターン用意し、抽象的な意見で終わらず説得力を持たせる訓練をします。
ステップ4:過去問演習と論理展開の添削
制限時間内に論述問題を完成させ、添削を受けます。「主張と根拠がズレていないか」「序論・本論・結論のバランスが取れているか」を厳しくチェックしてもらい、論理を磨きます。
データ分析・理科融合型小論文対策4ステップ
ステップ1:図表から「事実」と「傾向」を正確に抽出する
グラフのピーク、最低値、年代間の比較など、客観的な事実を数値で読み取ります。抽象的な表現(例: 「増えている」)ではなく、「〇〇から〇〇に増加した」という具体的な記述を心がけます。
ステップ2:公的な統計データを社会課題と結びつける
読み取ったデータ(例: 高齢者の死亡割合)を、現在の社会問題(例: 気候変動、在宅医療の課題)と結びつけ、そのデータが持つ意味を深く考察する力を養います。
ステップ3:理科の基礎知識を「論述」で説明する訓練
物理、化学、生物の基礎的な原理(例: 遺伝の仕組み、化学反応式、エネルギー保存則)を、専門用語を使いながら、簡潔な日本語で論理的に説明する練習をします。
ステップ4:過去問演習と時間配分の戦略化
全大問を通して、最初に「資料分析」を片付け、次に「理科選択」で得点を確定させ、最後に「和文論述」に取り組むなど、最も効率的な時間配分戦略を過去問で確立します。
さいごに
ここまで、記事をご覧いただきありがとうございました。
今回は群馬大学の過去問解説を交えて、小論文対策の方法を紹介いたしました。
ただ、試験問題については年度ごとに変わっていくこともあるため、いろんなパターンの小論文には触れておきましょう。
現在、弊校では小論文のパターン別の対策記事を出しております!
その他のパターンの対策を知りたいという方はぜひ、こちらもご覧ください!

