今回は東京科学大学保健衛生学科看護学専攻の入試対策として、入試過去問の解説と、解き方のポイントを紹介いたします。
また、問題の特徴についても紹介しておりますので、看護学校の入試で小論文がある方は必見の内容となっております。
目次
東京科学大学 看護学専攻
推薦入試 小論文対策
問題の概要(2025年度入試)
出題形式:課題文型
問題内容:要約問題(150字以内)+課題文読解をもとにした論述(500字以内)
出典:エイミー・C・エドモンドソン(訳:野津智子)『チームが機能するとはどういうことか「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ』
論点が設定しやすい
課題文の中に筆者の主張や論理展開、問題提起など、論述に必要な情報を集めやすいのが課題文型の特徴です。
読解力が求められる
課題文型で最も重要なことは、課題文の内容を正確に読み解くことです。
筆者の主張、論理の展開、そして筆者が暗に示しているであろう問題意識を的確に把握できなければ、的はずれな意見を述べてしまうことになります。特に、抽象的な文章や専門用語が多く使われている文章の場合、高い読解力が求められます。
制限時間内に読み解くスピードが必要
課題文によってかかる時間はさまざまですが、限られた試験時間の中で文章の要点を把握し、自身の考えをまとめるスピード感が求められます。
問題の特徴
小論文対策をするうえで押さえておきたいのが、問題の特徴です。
受験校を絞っている方は、そこに特化した対策をしていくことが効率よく勉強をしていく方法になります。
今回、紹介する東京科学大学の小論文の特徴は以下の通りです。
課題文が長く、多くの情報が盛り込まれている
上記が東京科学大学の小論文の最も大きな特徴です。
他大学の課題文型の小論文の問題文に使われるページ数は1〜2ページ程度になりますが、東京科学大学は4~5ページ程度と倍近くの情報量です。
ですが、設問に関しては比較的シンプルな内容となっているため、長い文章の中にある情報を理解し、簡潔にまとめる力が非常に重要となってきます。
課題文の概要(要約)
スペースシャトル・コロンビア号の事故を例に、組織における「発言しにくさ」がいかに深刻な結果を招くかを描いている。技術者が懸念を抱きながらも上層部に意見できなかった背景には、組織内の立場や対人不安があった。このような現象は医療現場にも見られ、看護師が疑問や違和感を抱えても、上司や医師への遠慮から発言を控えることがある。
こうした沈黙を生む根底には、「心理的安全」の欠如がある。心理的安全とは、批判や不利益を恐れずに自由に発言できる雰囲気のことであり、信頼と相互尊重に支えられている。心理的に安全な環境では、率直な意見交換やミスの共有、助けの要請が可能となり、チームの学習やパフォーマンス向上に寄与する。
一方で、強い結束や「集団思考」は異論を封じる原因となり、意思決定を誤らせることもある。特に原子力や医療などリスクの高い分野では、心理的安全が欠如すると小さな懸念が放置され、大事故に繋がる恐れがある。したがって、組織は発言を促し、失敗を共有できる文化を醸成することが不可欠であると論じている。
設問①
筆者が考える「心理的安全」について、本⽂の内容を要約して述べなさい(150字以内)
ポイント
この問題では、本文の要点を抽出して150字以内でまとめる力が問われます。
また、「心理的安全」と要約する言葉が指定されています。
以下の観点から要約をしていきましょう。
- 「心理的安全」の定義を明確にする
→このように、ワードが指定されているような問題の多くは、そのワードよりも後ろの方で説明や事例など、要約をするうえで必要な話が展開をされます。そのため、「心理的安全」という言葉が見つかったらその後の文章に注目しながら進めていきましょう。その後の文章には筆者の考える定義や、「こうあるべきである」という意見が書かれていることが多いです。 - それがなぜ大事なのかを簡潔に述べる
要点の見つけ方
今回の問題では「心理的安全」というように要約する言葉が指定されています。
そのため、問題を解くうえで、最初に「心理的安全」という言葉がどこのページから出てきているのかを見つけ出すことです。
解答例
心理的安全とは、職場で意見や懸念を自由に述べても否定されたり罰せられたりしないと信じられる状態を指す。これにより人々は失敗を隠さず共有し、協働や学習が促進され、問題の早期発見と安全性の向上につながる。対人不安を減らし、率直な対話を可能にすることが重要である。(129字)
設問②
将来、看護師としてチームで働くなかで重要なことは何か、本⽂の内容を踏まえ、あなたの考えを述べなさい(500字以内)。
ポイント
この問題では筆者の主張(文章内容)を理解したうえで、自身の考えと結びつけて説明することが求められます。文章構成としては以下のようなステップを踏んでまとめていきましょう。
- 導入(問題提起):心理的安全とはなにか
- 心理的安全がなぜ看護師の現場で必要なのか(説明)
- 自分ならどう関わるか(本文の内容と自身の考えの結びつけ)
- 結論
東京科学大学 看護学専攻
推薦入試 小論文対策
問題の概要(2024年度)
出題形式:課題文型
問題内容:要約問題(150字以内)+課題文読解をもとにした論述(500字以内)
出典:野口裕二『物語としてのケア』より改編
課題文型の特徴
今回紹介する東京科学大学の小論文問題の形式である【課題文型】は以下の特徴があります。
論点が設定しやすい
課題文の中に筆者の主張や論理展開、問題提起など、論述に必要な情報を集めやすいのが課題文型の特徴です。
読解力が求められる
課題文型で最も重要なことは、課題文の内容を正確に読み解くことです。
筆者の主張、論理の展開、そして筆者が暗に示しているであろう問題意識を的確に把握できなければ、的はずれな意見を述べてしまうことになります。特に、抽象的な文章や専門用語が多く使われている文章の場合、高い読解力が求められます。
制限時間内に読み解くスピードが必要
課題文によってかかる時間はさまざまですが、限られた試験時間の中で文章の要点を把握し、自身の考えをまとめるスピード感が求められます。
問題の特徴
小論文対策をするうえで押さえておきたいのが、問題の特徴です。
問題の特徴を知ることで、受験校に特化した対策をしていくことができます。
今回、紹介する東京科学大学の小論文の特徴は以下になります。
課題文が長く、多くの情報が盛り込まれている
上記が東京科学大学の小論文の最も大きな特徴です。
他大学の課題文型の小論文の問題文として使われるページ数は1〜2ページ程度になりますが、東京科学大学は4~5ページ程度と倍近くの情報量です。
ですが、設問に関してはシンプルな内容となっているため、長い文章の情報を理解でき、情報を簡潔にまとめる力が非常に重要となってきます。
課題文の概要(要約)
筆者は、私たちが現実を理解する方法の一つとして「物語」の形式に注目しています。物語は、出来事を時間的・空間的に整理し、混沌とした現実に意味のまとまりや一貫性を与える働きを持っています。特に不可解な事件などに直面したとき、人はその背後にある「人生物語」を知ろうとすることで、状況を理解しようとします。
筆者は、こうした「物語的理解」は「科学的説明」とは異なり、偶然や個別性を重視しながら現実を捉える点に特徴があると述べます。また、既存の物語(例:伝記や童話)が、私たちの現実理解のモデルとなり、理解を助けると同時にその方向性を制約する働きもあるとしています。
設問①
筆者が考える「物語」は具体的にどのような作用を持っているか。本⽂の内容を要約して述べなさい。(150字以内)
ポイント
この問題では、本文の要点を抽出して150字以内でまとめる力が問われます。
情報量が多い課題文から、素早く要点を見つけ出し、まとめ上げることが重要となってきます。
- 物語は現実にまとまりを与える
- 時間的・空間的な理解を可能にする
- 科学的説明では捉えきれない偶然や背景も含めて説明できる
- 一方で、既存の物語は現実理解を制約できる
要点の見つけ方
今回の問題では「作用」とは何かを問う形式の問題で、要約するべき言葉が指定されています。そのため、「作用」という言葉がよく出る、「作用」という言葉の説明をしている部分を探すと筆者の問題の要点を見つけ出しやすくなります。
解答例
筆者は「物語」が、出来事を時間的・空間的につなげ、混沌とした現実を一貫性あるものとして理解可能にする作用を持つと述べている。また、偶然や必然が重なる経緯を描き、科学的説明では表せない人間の行動の背景も明らかにできる。ただし、既存の物語が理解を制約することもある。(131字)
設問②
傍線①「『物語』は、単独の言葉だけではあらわせない事態のつながりを表現してくれる。」について、本⽂の内容を踏まえ、あなたの経験を例にして具体的に述べなさい。(500字以内)
ポイント
この問題では筆者の主張(文章内容)を理解した上で、自身の経験と結びつけて説明することが求められます。文章構成としては以下のようなステップを踏んでまとめていきましょう。
- 導入(問題提起):傍線部の意味を自分なりの解釈で述べる。
- 経験の紹介:過去の体験
- 物語として理解したこと:その経験を踏まえてどのような「つながり」があったか
- 本文との関係付け:本文で述べている内容と、自身の考えを結びつける
- 結論
小論文の解き方のステップ
ステップ1:設問を先に読む
今回の入試問題は課題文の読解力を求められる問題になります。
そんな課題文読解の問題の時に役立つのが「設問を先に読む」ことです。
先に「何を聞かれているか?」を把握することで、文章のどこに目をつけて読めば良いのかが分かり、時間のロスに繋がります。
ステップ2:本文を読みながらマークをつける
筆者の主張、例、対比、結論、その他キーワードにマークをつけておくことで、文章のどこを見れば良いのか明確になる。また、今回のように語句の要約が求められる形式の問題は、指定されたワードが出ている箇所にマークをすると、要点を探しやすくなる。
ステップ3:要点メモ・構成案を練る
要点が見つかって文章を書く材料が揃ったら、直接解答用紙には書かず、下書きや空いたスペースにメモを残しておきましょう。
メモを残すことで、書き起こす前に自身の回答が本文で問われていることに沿っているかなどを確認することができます。
・構成例
設問①:主張+補足
設問②:主張解釈→経験談→解釈の当てはめ→本文との紐付け→結論
ステップ4:実際に書く
文章の下地ができたところで、書き起こしていきます。
以下のポイントを踏まえて書き上げましょう。
・「起承転結」の基本構成が守れているか
・わかりやすく、端的に述べられているか
・段落分けができているか、誤字脱字がないか文章の見た目の確認
・問いに正しく答えられているか、主張が一貫しているか
特に見落としがちなものが誤字脱字です。
時間制限があり急いで書いている分、気づきにくい部分になるため上記のステップを踏んで、書き上げていきましょう。
課題型小論文の対策について
課題型小論文の対策
こちらでは、課題文型小論文の対策方法に関して紹介をしております。
要約練習
今回ご紹介した、東京科学大学のように課題文型は論述とセットで要約問題を行う大学もあります。
対策を行う中で100字〜200字程度の要約問題には触れておきましょう。
<メリット>
- 文章を読むスピードが向上する
新聞のコラムや新書を読み、100字や200字で要約する練習を繰り返しましょう。これにより、文章の要点を素早く掴む力が身につきます。
筆者の主張を見抜く
文章には特徴があります。そのため、何が筆者の主張を指しているのかなどの、課題文型で共通しているキーワードを覚えておきましょう。
<ポイント>
「つまり〜」「〜と言える」といった、筆者の主張をまとめた部分や、段落の冒頭・末尾に注目して読む癖をつけましょう。
論点を捉える
課題文の中には必ず、筆者の考えや主張があります。論述問題は、その情報をもとに自身の意見を書いていくもになるため的確に論点を捉える練習をしましょう。
<ポイント>
自分の意見を述べる際には、「なぜそう思うのか」という理由を必ず明確にし、客観的な根拠や具体例を付け加える練習をしましょう。
さまざまなテーマの文章を読む
看護系の学部を受験するからといって、必ずしも医療系のテーマが出るとは限りません。
学校によってはSNSの利用やAIの活用方法、女性の社会進出など、さまざまなテーマの課題文が出るため、日頃から様々な分野の文章に触れておくことで、どんな課題文が来ても対応ができるようになります。
課題文型は、読解力と論理的な思考力を同時に測る形式です。過去問を繰り返し解き、添削してもらうことで、着実に力をつけることができます。

